前回、アルコールが身体にもたらす作用や体内での代謝についてお伝えしました。
アルコール分解の過程で生成されるアセトアルデヒドという物質には毒性があり、これを解毒して体外へ排出するためには、体内の酵素、そしてビタミンやミネラル、ブドウ糖などの栄養素を必要とします。
これらの代謝活動は肝臓にて行われますが、この活動が活発になるほど肝臓は疲弊してしまいます。
もともと肝臓は多くの仕事をいくつもこなしてくれる優秀な臓器です。
その主な役割は下記の三つになります。
1.タンパク合成とエネルギー(グリコーゲン)貯蔵
食事から摂取した栄養(糖質、脂質、タンパク質など)を体内で使える形に変化させたり、エネルギー源として蓄えておくことができます。
2.消化液(胆汁)の合成と分泌
コレステロールや胆汁酸を原料にして胆汁を作ります。胆汁には脂質を消化する役割や肝臓で処理された老廃物を排出する働きがあります。
3.有害物質の解毒と分解
アルコールに限らず、体内で生成されるアンモニア、摂取した薬や添加物など身体に有害な物質を分解して無毒化してくれます。
このように身体にとって大切な役割を持つ肝臓ですが、一つの仕事にとらわれたり疲弊によって機能が低下したりすれば他の仕事も疎かになってしまいます。
例えば、アルコール摂取後は肝臓が解毒のために利用されるため、一時的に身体のエネルギー源となる肝グリコーゲンが不足し、低血糖(エネルギー不足)の状態に陥ってしまいます。(日常的に飲酒が続けば肝グリコーゲンの量も慢性的に低下)
また、アルコールは肝臓だけでなく腸の働きも阻害することがわかっています。
腸には、栄養を吸収したり細菌の侵入を防ぐ腸壁というものがあります。
この腸壁の表面は、タイトジャンクションと呼ばれる構造で細胞同士が結合してバリアを張っています。
しかしアルコールにはこのタイトジャンクションを破壊する作用があり、そうすると腸壁のバリアが薄れ、異物や毒素が血中に流れ出てしまう恐れがあります。
さらに腸の働きのエネルギー源にはグルタミンが欠かせませんが、アルコールにはこのグルタミンの吸収を阻害するデメリットもあります。
こういった点から慢性的な飲酒は腸内環境を悪化させ、日常的な栄養不足やなんらかの不調を引き起こす原因となり得ます。
次回では今回までの内容を踏まえ、アルコールのデメリットをできるだけ抑える方法、そのためのおつまみの選び方などもお伝えしたいと思います。
アルコールと栄養②