前回、タンパク質を構成するアミノ酸についてお話しました。
人の身体の中では、20種類のアミノ酸がいくつも組み合わさることによって様々なタンパク質を構成しています。(体内のタンパク質は10万種以上あり、それぞれが決まった固有の働きを持って生命活動を支えています。)
20種類のアミノ酸は、体内で生成できず食事から摂取する必要がある必須アミノ酸と、体内で自然と作り出すことができる非必須アミノ酸の二つに分けられます。
11種類の非必須アミノ酸は体内で合成できるので、食事では必須アミノ酸を摂取することが特に推奨されますが、アルギニンやグルタミンといったアミノ酸は一定の条件下でその必要量が増加し、体内の合成だけでは追いつかず不足してしまいがちです。
そんな条件下必須アミノ酸と呼ばれるアミノ酸のうち、グルタミンについて今回は解説していきたいと思います。
まず、グルタミンは20種類のアミノ酸の中で最も多く体内に存在し、多用途に利用されています。(体重70kgの人であれば約70~80gが血中や骨格筋、肝臓などに分布)
体内の様々な場所でグルタミンは貯蔵され、必要なタイミングで使われていくということになりますが、次はその働きを各部位や臓器ごとに確認してみましょう。
筋肉:筋の分解や損傷を抑える
タンパク質を構成する材料や細胞のエネルギー源となるグルタミンには、筋肉の損傷や分解を抑え、回復を促す作用があります。
ある研究では、グルタミンを1日およそ6グラム摂取することで、トレーニング後の血中AST、クレアチンキナーゼ、ミオグロビンといった筋肉のダメージを表す値が実際に低くなり、筋の損傷が抑えられているという結果が示されました。
また、ハードなトレーニングは筋を分解する循環コルチゾールの分泌量を上昇させますが、グルタミンにはこの分泌を抑える働きもあり、トレーニング後の筋のリカバリーにも効果的です。
腸:過敏性腸症候群(IBS)の寛解、タイトジャンクション(TJ)の保護
グルタミンは腸粘膜の主要なエネルギー源にもなるため、タイトジャンクションと呼ばれる腸のバリア機能の強化や炎症を抑制する働きがあります。
さらにエネルギーが十分にあることで腸の蠕動運動が促され、下痢や便秘など腸の不調からくる症状を改善してくれるので、腸内環境の安定を保つためにもグルタミンは欠かせません。
胃:胃粘膜の保護
グルタミンには胃粘膜を保護、修復する作用があります。
胃の粘膜が弱ると、胃酸の刺激で胃炎や胃潰瘍を引き起こしやすくなります。
そういった症状の予防、そして組織の傷や欠損部分を回復する働きもあるため、特に胃潰瘍の治療促進に役立ちます。
免疫:免疫細胞の活性化
身体を守るための免疫細胞である好中球、マクロファージ、リンパ球の増殖と、体内の異物や病原体の認識、情報伝達を行うサイトカインの産生にもグルタミンは欠かせません。
グルタミンは免疫細胞を作るエネルギー源であり、グルタミンが不足すると免疫機能が低下、風邪や感染症にかかりやすくなります。
また、ウイルスや細菌が体内に入るのを防ぐIgA抗体の材料にもなるため、免疫力を高める重要な役割を担っています。
このように、グルタミンには身体の様々な部位を守る働きがあります。
グルタミンは一定の条件において必要量が増加する「条件下必須アミノ酸」と冒頭でもお伝えしましたが、特に運動後や疲労時、環境や体調の変化が起きた時など、身体がなんらかのストレスを受けていることがその条件になります。
継続的にトレーニングをしている方だけでなく、疲労が抜けにくく慢性的な不調を感じている方ももしかしたらグルタミンが不足しているかもしれません。
サプリメントでもグルタミンは補給できますので、そういった方は毎晩就寝前に5グラムを目安に摂取してみてください。
食事からの摂取方法などもまた改めてご紹介したいと思います。
グルタミン