身体の各関節にはそれぞれ可動域(動かせる範囲)が定められていて、この可動域が広いほど柔軟性も高いとされています。
可動域は筋肉の硬さや関節の構造などによって差はありますが、ある程度の基準値が決まっています。
しかし先天的または後天的な要因のために通常よりも大きな可動域を示す関節もあり、これを関節の過可動性、あるいは関節弛緩性とも呼ばれます。
様々なスポーツ、特にバレエや体操といった種目では全身に高い柔軟性が求められます。
そのためストレッチや柔軟運動で、関節の可動域を過剰に広げていくようなトレーニングもよく見受けられます。
このようにスポーツやトレーニングによって獲得された異常な可動域は、後天的な関節過可動性と言えるでしょう。
反対にもともと関節の構造が浅くなっていたり、靭帯が緩かったりするなど生まれ持った体質によるものは先天的な関節過可動性となります。
上記のようなスポーツに限らず、一般的に柔軟性が高いことは良いと思われがちですが、高すぎる可動域は関節の不安定性を生じます。
また関節の過可動性は、筋肉や骨格系の障害発生率リスクとも関連性があると言われています。
つまり柔らかすぎる関節は安定力が低下し、いざという時に身体を支えることができません。
スピード系のスポーツではまっすぐ走るだけでなく、急な方向転換、一瞬でストップする減速動作も必要となります。
その際に足首や膝、股関節など下肢の安定性が高くなければ衝撃を抑えきれず、大きな怪我の原因となってしまいます。
ゴルフなどのスイング系のスポーツ、野球など投球動作のあるスポーツでは、腰や肩の可動域が広いほうがパフォーマンスは高まりやすいですが、その分関節への負荷も大きくなります。
捻られた腰や肩をしっかりと支えておく筋力も大切になってくるということですね。
一般的なトレーニングでも同様に、過可動性の高い人はダンベルを持ったまま肩や腰を大きく動かすエクササイズなどに注意が必要です。
大きく動きすぎる分、ダンベルやバーベルの負荷が関節にダメージとなり肩や腰を痛める危険性があります。
またヨガやダンスなど重りを使わない動きであっても、腰や股関節を痛める人は少なくありません。
ポーズをとろうとしすぎて柔らかい部分を過剰に動かせば、それが関節への負荷となってしまいます。
身体を大きく曲げた分だけ関節には負荷がかかるので、それに比例してより強く支える力がなくてはいけません。
このように関節の可動域は、狭すぎれば動作に制限が生まれ、広すぎると安定性を損ないます。
身体が硬い人はあまりストレッチをせず、逆に柔らかい人はどんどん可動域を広げようと筋肉を伸ばし続けてはいないでしょうか。
各部位の障害予防、さらには機能的で健康な身体作りのためには、自身に不足してる要素を鍛えていくことが重要です。
まずは適切な可動域の獲得、過可動性のある場合はそれをコントロールできる安定性と筋力を身につけていきましょう。
関節の過可動性