トレーニング理論 身体について

抗重力筋

私たちの身体は、常に地球の重力によって負荷を受け続けています。
この重力に対して全身の筋肉が働くことで、立ったり歩いたり様々な動作を遂行しています。

動くこと以前に、日常的に立位や座位といった姿勢を保つだけでも重力の影響を受けているわけですが、無意識のうちにこの重力下で身体を支えている筋肉を抗重力筋と呼びます。

抗重力筋の主な種類
・脊柱起立筋群、広背筋(首や背中)
・腹直筋、腸腰筋(腹部)
・大臀筋(お尻)
・大腿四頭筋(太もも前面)
・下腿三頭筋(ふくらはぎ)

抗重力筋には上記の筋肉が挙げられますが、これらの筋群が重力とのバランスを絶えず取りあって姿勢を維持してくれています。

この抗重力筋は加齢とともに弱くなり、高齢者の姿勢不良や腰痛、転倒や衝突といった事故、延いては寝たきりなどを招く原因とも言われています。
そのため特に高齢者の方たちは、基本的な姿勢や動作を支える土台として、これら抗重力筋をしっかりと鍛えておく必要があるでしょう。

では高齢者以外の人にとって、これらの筋群は身体にどのような影響があるでしょうか。

筋肉の弱化は20代以降徐々に進んでいくため、先に挙げた将来的なリスク予防として継続的な運動やトレーニングはもちろん大切です。
その一方で、偏った姿勢の保持や一部の筋群の使いすぎ、過緊張により全身のバランスが崩れてしまうことにも気をつけておかなければいけません。

抗重力筋は重力に抵抗して身体を支えている最中、常に緊張状態(力を発揮している状態)にあります。
その間、全身の抗重力筋それぞれがバランスよく身体を支え合っている場合、つまり良い姿勢姿でいる場合、筋肉への負荷は最小限に抑えられます。

しかし前回の記事でもお伝えしたように、頭の位置が前に出ている、背中が丸まっているという姿勢を続けていると全身のバランスは崩れ、一部の抗重力筋に負荷がかかりすぎてしまいます。

デスクワークなど長時間椅子に座ったまま頭を前に傾けていると、首の後ろの筋肉は頭を起こそうとして休むことなく力を出し続けなければいけません。

さらに立位の姿勢ではどうでしょうか。
まっすぐ立っている状態と、頭を少し前に出した状態とで身体の緊張具合を比べてみましょう。

頭を前に出すと首の後ろ以外にも、腰や太ももの前面に力みを感じてくると思います。
これは立位の状態では重力に対して抵抗する力がより必要になるため、首だけでなく腰の力も使って上体を支えようとしているからです。

加えて太ももにも力みを感じるのは、頭が前に出ると重心も前のめりになり、そのまま前に倒れてしまうのを脚の力で支えているためです。
これは頭の位置に限らず、背中が丸まって骨盤が前に出ている人、妊娠中や肥満体型で腹部が大きくなっている人にも見られる傾向です。

身体はまず重力に対してバランスをとり、安全な状態を保とうとするので、このように重心や身体のポジションに問題がある場合、どこか特定の部位を過剰に働かせてその姿勢を維持しようとします。
その姿勢が長く続けば続くほど、働いている筋群は疲労し、使われていない筋群は弱くなってしまうということですね。

以上のことを踏まえて、自分自身の身体についても少し考えてみましょう。
先ほど立った時にすでに頭が前に出ている人、または重心を前方に感じるという人は背面部の緊張が強くなっているかもしれません。
そういったケースでは、背中や太もも前面のトレーニングよりもまずは背面部を緩めることが重要になってきます。

また背中や太もも前面を使いすぎているということは、反対側のお腹やお尻、もも裏あたりはだんだんと使われずに弱くなってしまいます。
同じ抗重力筋であっても、姿勢によってその働きには偏りが出てきてしまいます。
筋肉のバランスを保つためには姿勢の改善に加えて、弱化しやすいこれらの筋群を意識的に鍛えるとよいでしょう。

身体の不調解消には、こういった全身のバランス調整や緊張部位を緩めることがポイントになってきます。
各部位のリラックス方法やセルフケアのやり方などもご紹介していきたいと思います。

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