身体について

呼吸と自律神経

前々回の記事で、呼吸と動作は連動しており、呼吸によって動作を促すこともしくは動作によって呼吸を促すことができるとお伝えしました。
伸びをするように身体を伸展させると息が吸いやすくなり、反対に身体を丸めると息が吐きやすくなるという内容でしたが、呼吸の作用をより詳しくみていくと動作だけでなく、自律神経系にも作用していることがわかります。

身体が活動中、興奮や緊張状態が高い時、自律神経は交感神経が優位になっています。交感神経が優位になるとアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモン分泌が高まり、筋肉や血管は収縮し呼吸数も増加します。
逆に副交感神経が優位になると筋肉の弛緩や血管の拡張が促され、身体活動も休息、安静化に導かれます。主呼吸筋である横隔膜も弛緩することで可動域が広がり、ゆっくりと深い呼吸ができるようになります。

通常、交感神経は活発に行動する日中に高まり、休息や睡眠する夜にかけて副交感神経に切り替わっていきます。
しかし様々なストレスや情報量の多い現代社会ではなかなか身体を休めることができず、交感神経も亢進したままリラックスしてくれません。

交感神経優位の状態が続くと身体や呼吸にも乱れが生じてしまいます。
浅く速い呼吸は酸素と二酸化炭素のガス交換のバランスを崩し、過換気症候群といい体内のpHに影響を与えます。
pHとは溶液の酸性度を表す値で、水素イオンの濃度により0~14の数値で測定されます。人間の体内は通常7.35~7.45で中性に近い数値を保っています。

体内で作られた二酸化炭素が必要以上に排出され、血中の二酸化炭素の濃度が低くなってしまうとpHは上昇し、細胞内をアルカリ性に傾けます。
そうすると身体にはめまいや痺れ、息苦しさや低カリウム血症による四肢の緊張低下などを引き起こす恐れがあります。

一方、ガス交換が適度に行われず低換気の状態では、二酸化炭素がきちんと排出されずに血中濃度は高くpHは低くなり細胞は酸性に傾きます。
この場合も頭痛や痙攣、興奮状態が続くなど身体に良くない症状が現れます。

その他、呼吸以外にも内臓機能やホルモンバランスなど自律神経に働きを左右されるものは多くあります。
日頃からなんとなく身体がだるかったり気分がすっきりしない人はもしかしたらこういった自律神経系に問題があるのかもしれません。

自律神経は外部環境なども関係しますが、呼吸によってコントロールできるとも言われています。
交感神経や副交感神経による呼吸変化を逆手にとり、先に呼吸を意識的に行うことで自律神経へと関与してみましょう。

特に身体が緊張し交感神経が活発になっている時、呼吸数も上昇しています。
その状態から身体を休めたい場合には長く息を吐き、呼吸のペースを落としていきます。
呼吸が浅くなるとどうしても吸気の割合が高くなってしまうのでうまく息を吐けません。なのでまずは息を吐き切ることを意識し、その後自然と必要な分だけ酸素が入ってくるように肺を空っぽにしてあげましょう。
イメージとしては吸気と呼気の割合が1:2になるように、吸った時間の二倍の長さで息を吐いていきます。
もしくは息を吐いた後に1秒程度間をおいて、呼吸数を減らす方法も効果的です。

さらに身体を屈曲する動作と連動してあげるとより息を吐きやすくなります。
座ったままでも横になった姿勢でもよいので、軽く背中を丸めて呼吸を繰り返してみましょう。
気持ちも落ち着き、筋肉などの緊張も少し緩んだように感じるかもしれません。

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