身体について

パラドックス呼吸

正しく安定した呼吸を行っている時、胸とお腹は同時に膨らんでいきます。
息を吸うと肺に空気が入り、下降した横隔膜に押されて腹部も上から押さえた風船のように前後左右に広がります。
反対に息を吐くと、空気が抜けるように胸とお腹は全体的にしぼんでいきます。

この胸とお腹の協調的な動きが正しい呼吸動作の証になるのですが、どこかにエラーが起きている場合、胸とお腹それぞれの動きが連動してくれません。
これをパラドックス呼吸(矛盾した呼吸)と言います。

例えば息を吸った時に胸が膨らみ、同時にお腹も膨らんでいくはずですが全く広がりがない、もしくは逆にへこんでしまっている状態、これらはパラドックス呼吸が疑われます。
お腹が膨らまない原因としては、吸気時に下降するはずの横隔膜がきちんと機能していないこと、お腹を意識的に固めて腹部の拡張に抵抗してしまっていることなどが挙げられます。
横隔膜の機能が低下している場合、肺に空気を入れるため肩をすくめるように持ち上げたり、過剰に胸を張った姿勢に陥りやすいです。
通常の呼吸でこのような姿勢を繰り返していれば、いずれ肩や背中に痛みが起きてしまうかもしれません。

また日頃からお腹を引っ込めた姿勢も要注意です。
意識的に良い姿勢をとるためやウエストのシェイプアップなどを目的として常にお腹をへこませている人を見かけますが、これでは腹部が十分に広がっていきません。
腹部にはコルセットのようにお腹をぐるっと取り囲む腹横筋という筋肉があります。
この腹横筋がリラックスして伸びることで腹部が周囲に360度適切に広がっていくのですが、お腹をへこませていることで腹横筋がリラックスせず常に収縮した状態が続きます。
腹横筋が固まってしまっているため横隔膜が下がるスペースが生まれず、徐々に横隔膜の機能も低下してしまいます。

ピラティスのレッスンなどでは、胸式呼吸といってお腹をへこませ胸を膨らませる呼吸方法があります。
これはエクササイズ中に腹部を意識し、身体を安定させるために行っているものなのですが、この呼吸を繰り返しすぎることで日常でもお腹がリラックスせず胸式呼吸が身についてしまっている人もいたりします。
身体の機能を高めるためのものが、逆に呼吸動作を阻害してしまっては元も子もありません。
ピラティスのレッスン中、トレーニングで重りを持つ時、日常生活の安静時など状況に適した呼吸を選択できるようにしましょう。

現代社会では仕事や時間的な忙しさ、様々なストレスによって身体が緊張しがちだと言われています。
呼吸トレーニングと聞くと思いっきり息を吸って吐いてのような動きを想像するかもしれませんが、身体をリラックスさせることもトレーニングになります。
呼吸筋の緊張を解くことが正しい呼吸動作の第一歩になりますので、まずは身体の力を抜き、ゆっくりと息を長く吐いてみましょう。
息を吐き切れば自然と吸う動作に移ります。
ここでも急いで吸ってしまわず、胸とお腹の膨らみを感じながら肺に空気を入れていきます。

基本的な動作ですが正しく行うことで呼吸筋のバランスを整え、身体の機能を高めてくれます。
なかなか身体を休めることができていない人、または日々ハードにトレーニングをしている人も身体の緊張状態が続いてしまっているかもしれません。
呼吸もトレーニングの一つだと思ってぜひ日常的に取り入れてみてください。

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