トレーニング理論

柔軟性と可動性

身体がよく動くためにはそれぞれの関節が動く幅、つまり関節可動域を広く保っておかなければいけません。そのためにも全身の柔らかさが必要というお話をしましたが、身体の柔らかさを表す言葉には「柔軟性」と「可動性」があります。
柔軟性という言葉は一般的にもよく知られていると思います。反対に可動性とはあまり聞きなれない言葉ですが、トレーナーやトレーニング用語の中では意味を区別されているものですので、もしかしたら耳にすることもあるかもしれません。ここでは二つの言葉にどのような違いがあるか簡単に説明していきたいと思います。

まずは言葉の定義ですが、柔軟性とは「筋や筋膜、腱などの軟部組織の柔らかさによって関節が動く幅」であり、可動性とは「関節を意識的にコントロールして動かせる幅」とまとめることができます。英語にすると柔軟性はflexibility(フレキシビリティ)、可動性はmobility(モビリティ)と訳されます。

関節は骨と骨が筋肉などの組織によってつながっています。そのため関節を動かすときには、その関節を構成する骨に付着している筋肉も引っ張られたり縮んだりしています。これらの組織が良好な柔らかさを持っていれば関節も正常に動くことができます。しかし何らかの原因で筋肉が硬くなってしまっていると十分に伸び縮みすることができません。筋肉の伸び縮みする長さが短くなってしまえば、それに合わせて関節の動く幅も狭くなってしまいます。
このように身体の組織など物理的な要因によって定められるものを柔軟性と呼びます。柔軟性を高めるためには筋肉や腱がよく伸び縮みする状態を作っておくことが大切だということですね。

可動性は、柔軟性の中に存在します。もともと持っている柔軟性の中で、自分の意志で動かしたりコントロールしたりすることができる範囲のことを可動性といいます。
例えばストレッチで身体をを引っ張りながら伸ばしたり、前屈で背中を押してもらって届く範囲のことを柔軟性と呼びます。
そういったサポートや補助をせずに自分の力で伸ばせる距離、動かせる範囲が可動性です。立位での前屈で、誰かに背中を押してもらえれば指先が床につくのに対して、自分一人では届くことができません。これが柔軟性と可動性の違いです。また普段は両腕が180度上に上げられることができるのに、ダンベルを持ったり体勢を変えたりすると上がらなくなってしまいます。これは重りや姿勢によって可動性が低下していると言えます。

柔軟性が物理的な要素によるものに対して、可動性は動作をコントロールする筋力や神経、感覚など様々な要素によって決定されます。どちらも重要なものですが、トレーニングで大切なのはどこに問題がありどちらが不足しているのかを見極めながら進めていくことです。
身体が柔らかくても怪我をしてしまう人、動作がうまく行えない人は可動性が不足しているのかもしれません。しかし可動性を広げるためには柔軟性があってこそなので、基本的な身体の柔らかさも必要になってきます。
健全な身体づくりのためには自分に不足しているものを知ること、バランスよく身体の機能を高めていくことが効果的です。柔らかさだけでなく動作の強さ、正確さも同じように備えておきましょう!

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