トレーニング理論

機能的な身体

私たちはトレーニングの時だけでなく、日常生活の中でも様々な状況に応じて身体を動かしています。
歩いたりしゃがんだり、階段の上り下りや荷物を運んだり、普段の何気ない行動ですが、こういったすべての動作においても身体に負荷がかかっています。
そのため一日中動いていると疲労もしますし、どこか身体を痛めてしまうこともあるかもしれません。
ですが、それは体力や筋力の問題だけでなく身体を効率的、機能的に動かせているかといったことにも関係してきます。
歩いている時にしっかりと腕が振れているか、立ち上がる時に膝や股関節がバランスよく曲げ伸ばしされているかなど各部位が連動して働いていないと使いすぎ、もしくは使われていない箇所に問題が生じてしまいます。
身体が本来持っている機能を十分に使って動作を行うことで、身体にかかる負荷を分散し怪我や障害のリスクを減らします。また全身の効率的な動作がしなやかで動きやすい身体を作り上げます。
このようにスポーツだけに限らず、様々な動作を効率よくスムーズに行える機能や能力が私たちの身体には備わっており、それらを高めるためのトレーニングをファンクショナルトレーニングといいます。

ファンクショナルとは機能的、実用的といった意味ですので、トレーニングにおいても単調な動作や特定の筋のみを使う単関節運動ではなく複合的な動きが求められます。
身体の機能を分析するファンクショナルムーブメントシステムを構築したアメリカの理学療法士であるグレイ・クック氏も、「多くの筋群を動作パターンに統合していく多関節運動は機能的である」と述べています。
つまり一定の部位に負荷をかけて鍛えるだけのトレーニングではなく、多くの関節が動員されるような正しい動作で「動きの質」を向上するトレーニングがファンクショナルトレーニングであるとされています。

ではファンクショナルトレーニングとはどういったものなのか、と気になるところですが実際にはこのエクササイズがファンクショナルトレーニングです!というものはなく、その理論にしっかりと則っているかどうかが重要になっています。

「ファンクショナルトレーニングとはテクニックではなく原理原則である」と定義されるように、種目ありきではなくベースとなる理論を頭に入れておかなければいけません。
先のグレイ・クック氏はファンクショナルトレーニング理論の中で、次の5つの原則を挙げています。
1. 重力の利用(Use of Gravity) 重力に抵抗、反応できるかどうか
2. 分離と共同(Dissociate & Integrate) 関節が持つ安定性と可動性それぞれの役割を使い分ける
3. 3面運動(3Dimension Movement Pattern) 矢状面、前額面、水平面といった3面上の動きを取り入れる
4. キネティックチェーン(Kinetic Chain) 筋が連鎖して働くように複合的な動作を行う
5. 力の吸収と発揮(Loading & Unloading) 強い力を出すための準備部分とその切り返しができているか

これらは私たちの動きに欠かせない要素であり、この原則に基づいていることがファンクショナルトレーニングのポイントになります。
裏を返せば、これらの要素を含めていることがファンクショナルトレーニングですので、ほとんどのトレーニングに当てはめることができるかもしれません。
そのため機能的なエクササイズとして特別に取り入れる必要はないとの見方もありますが、運動不足などによって機能の低下や動作パターンが欠落してしまっているケースも多く見受けられます。そういった部分的な機能を取り戻すためには、やはり各原則を考慮しながらそこに特化したトレーニングをする必要があるのではないでしょうか。
5つの原則についてはまた詳しく解説していきたいと思います。

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